科学とは?
Last Update Date: 2004/12/01

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1. 科学とは?

 科学とは何でしょうか。

 巷では科学という言葉は、様々な意味で使われており、これという明確な定義はないように思えます。一般的なイメージでは、科学=自然科学であり、客観性とか再現性などというものがその特徴のようです。

 では、よく「科学的だ」と言われる行動分析学(あるいはパフォーマンス・マネジメント)はどうなのでしょうか。行動分析学が自然科学かどうかというのは、自然科学の定義によりますが、客観性と再現性はクリアしているように思えます。

 結局の所、科学とは何かを考える際には、科学とそれ以外を分ける境界が必要かと思われます。

 ポパー(Karl Raimund Popper,1902〜94)という哲学者は、その境界を「反証可能性」と規定しました。

 この「反証可能性」という基準は、世間一般に出回っている様々な疑似科学から科学を分けるものとしては一般的なものかと思われますので、ここでは「科学とは反証可能性を備えるものである」と定義し、話を進めていきたいと思います。

 では、反証可能性とは何でしょうか。

 まず、反証とは「ある仮説が間違っているということを、テスト命題が間違っていることにより証明すること(否定否定式)」を言います。正確にいうと「ある仮説が真であるならば、真であるはずのテスト命題が偽であることが示されたなら、仮説が偽であったことも示される」(森田、2001)ということです。

 具体例で説明すると、「部下の営業成績を上げるには研修に参加させればいい」という仮説を聞いたAさんがこの仮説に対して反証をするには、実際に部下を研修に参加させ、そのことにより営業成績が上がらないのを確認できればOKです。

 よって「部下の営業成績を上げるには研修に参加させればいい」という仮説は反証可能性を有しているため、科学の対象となり得ます(ただし、その仮説が正しいかどうかは別問題です)。

 反証可能性は、逆に反証可能でない仮説を考えることによりより明確になります。

 例えば、「部下の営業成績を上げるには、部下が毎日営業の神様にお祈りすればいい」という仮説を聞いたAさんがこの仮説に対して反証をするには、現代の科学をもってしても無理かと思われます。なぜなら、営業の神様の存在が証明できないからです(ところで、営業の神様にお祈りしたら、なぜか毎回契約が取れたと仮定します。しかしこれは単なる相関関係に過ぎません。相関関係と因果関係は明確に区別されます。しかし、疑似科学では、この相関関係を統計処理して有意差が出たものを因果関係と取り違えている場合があります)。

 よって、「部下の営業成績を上げるには、部下が毎日営業の神様にお祈りすればいい」という仮説には反証可能性がないことになり、科学の対象とはなりません

 以上、科学と非科学を分けるための基準としての反証可能性を見てきましたが、科学的に正しい(可能性が高い)とされるには、反証可能性を有していながら、実際に反証されていないことが必要となります。

 つまり反証可能性があるということと、実際に反証される(された)ということは明確に区別されるということです。

 具体例には、「地球は丸くなく、世界の果ては滝のようになっている」という仮説は、長距離の航海が可能な船を作ることができない時代には、理論上は反証可能性を有していましたが、実際に反証を行うことは技術的に不可能でした。そして、長距離の航海が可能な船を作ることが可能になった時点で反証を行うことが技術的に可能となりました。そしてついにマゼランの部下(もしくは鄭和)が世界一周をした時点で、この仮説は実際に反証されてしまい、一般に科学的には正しくないと信じられるようになりました。

 もう一度繰り返しますが、、反証可能性を備えつつ、未だ反証されていない仮説が科学的に正しい(可能性が高い)とされるものであり、スキナーの創始した行動分析学は、この意味で科学ということができます


(註)ポパーの「反証可能性」は「演繹主義」にもとづいた概念ではありますが、このことはスキナーの”Descriptive”(Michael, 1993)なアプローチ(直訳すると記述的だが、おそらく帰納的に最も近い)とは矛盾しないものであると私は考えます。
 スキナーによると(Skinner, 1961)、科学の理論の構築は、3つのステップを踏む。第1ステージは、基本的なデータを特定すること(to idenfify basic data)。第2ステージは、データの中の独立変数と従属変数などの(関数)関係を述べること(to express relations among data)。行動の科学は現在このステップにある(Johnston & Pennypacker, 1993)。第3のステージは、第2ステージのデータにおける関数関係を基に、より広範な事象を説明可能な理論を構築すること。この第3ステージにおいて構築される理論においては、欲望(wants)、能力(faculties)、態度(attitudes)などといった概念が含まれる。
 すなわち、理論の構築が完成した行動の科学においては、演繹的なアプローチも取り得る(ポパーの定義する科学と合致)が、現在の行動の科学はそこまで到達しておらず、現状では記述的・帰納的なアプローチを取るということのようです(違ってたら直ちに訂正します)。


2. 参考文献

Johnston, J. M., & Pennypacker, H. S. (1993). Strategies and tactics of scientific research. Hillsdale, NJ: Erlbaum.
Michael, J. L. (1993). Concepts and principles of behavior analysis. Kalamazoo, MI: Association for Behavior Analysis.
森田邦久 (2001) 勝手に哲学史入門. アクセス日:2001/9/13,http://www-miyakelab.mp.es.osaka-u.ac.jp/morita/philosophy/philindex.html.
Skinner, B. F. (1961). Cumulative record. New York: Appleton-Century-Crofts.




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